歯科医師としてか、人としてかの選択を考えさせられます。

院長ブログ

新潟市の歯医者・歯科・入れ歯・スポーツマウスガードなら「りんご歯科医院」

歯科医師としてか、人としてかの選択を考えさせられます。

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新潟駅から徒歩5分 「入れ歯専門外来」を持つりんご歯科医院から発信。

 昨日、夕方に毎月メンテナンスで通ってきてくれる、とても親しいある患者さんから連絡をもらい、自転車で転んでしまい歯が折れたとの報告を受けました。

至急来てもらい、口腔内を診たところ、下顎の右側犬歯とそのすぐ後ろの小臼歯の差し歯が外れていました。

でも、もともと状態の良い歯ではなく、亀裂も入っていたため再セットは無理な状態でした。

また、その方は下顎の両側臼歯が欠損しており、当院で作った入れ歯を使用しています。

今回外れた差し歯のその部位に、クラスプという金属のバネが掛かる歯であったのですが、再セットできないとなると非常に大変な処置になるのです。

折れた二本の歯は残根状態であったため、いずれは抜歯となりますが、とりあえずは入れ歯を使える状態にしなければなりません。

そのため、残根部位を取り外しの利くセメントで穴を埋め、入れ歯に歯を足す増歯という処置をし、犬歯の一本前の前歯にワイヤークラスプというバネをその場で作り、セットしました。

このワイヤークラスプは、チェアサイドで作るとなると結構大変です。

ゆるゆるのバネだとあまり意味がないのでしっかり機能することを確認しながら組み込みました。

他の患者さんも数人いたので、ここまでやるのに相当な時間がかかりましたが、何とか一時間半ほどで終わりました。

その時には、もうすでに8時を過ぎてしまいましたが、その患者さんはこのクラスプが前歯にかかり見えるのが嫌だということでした。

「この状態では、お店に出て働けない。お客様商売なんで入れ歯だと知られたら、恥ずかしい。」と言われてしまいました。

確かに犬歯より前歯の位置にクラスプが入るため、明らかに入れ歯のバネだと解ってしまうのは否めません。審美的に良くないのは、僕も百も承知です。。。でも、考えられることで今できるのは、これしかないです。

「でも、これがないと他にバネを掛けられる歯がないので、とりあえずはこれでいてもらえないでしょうか。。。そうでないと、入れ歯がカパカパに浮いてしまいますよ。恐らく、きちんと物を噛めませんよ。」と伝えました。

これを言って、本人の気持ちは多少揺れ動いたかもしれませんが、結局は変わらず「入れ歯安定剤で何とか維持させるからお願い、このバネを切ってください。」と言われました。

押し問答の末、その患者さんの意思を汲み取り、唇側の見える部分のクラスプを切りました(舌側のクラスプは一応残してありますが、あまり意味はないものです。)。

案の定、入れ歯はバネを失くした右側だけ少し浮くような感じになってしまいました。。。

その後、その患者さんは、「遅くまで申し訳ありません。ありがとうございました。」と言って帰られました。

僕は、その後、医院の片付けをして、車で帰る時にずっと考えてしまいました。

果たして、あれでよかったのだろうか?と。。。

でも、一晩経って患者さんの、気持ちを優先したことは人としては間違いではない、歯科医師として予想できることを全て話して、患者さんがそれを選択したのだから、これでいいと思うようにしました。

だって僕らは、歯科医師である前に人ですからね。。。患者さんの意思が第一ですよね。。。きっと従事していた教授や入れ歯を教えてくれた先輩に、見られたら大目玉を食らうとは思いますが。。。本当に、自分としては難しい選択だったなあと思う一日でした。

今、僕ができることはこの患者さんを心底、気にかけてあげて良い入れ歯を早めに作ることだなと思い、気持ちを切り替えていきます。

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