2016/04/03
昨日の午後に入れ歯専門外来にかかりたいという事で、入れ歯相談に来た中ではかなり若い女性の方が十日町市から来られました。十日町市は新潟市から遠く離れているので、当院を選んでくれて本当に頭が下がる思いです。
その方の口腔内を診てみると、上顎の歯は5本ほど残存しており、部分入れ歯が欠損部に入っておりました。その残存歯も全て重度歯周病のため状態が悪く、抜歯した方が良いと判断しました。下顎も左側の臼歯部は欠損しており、右側の臼歯部も大きな根尖病巣と、重度の歯周病のため保存は無理だと判断しました。現在の欠損部の歯茎もかなり骨吸収が大きく、抜歯後の入れ歯製作も困難が予想されます。患者さんにその旨を説明させていただき、今後の治療計画をお話しさせていただきました。
治療計画としましては、
1.重度歯周病で動揺の大きな歯は抜歯し、現在の入れ歯に増歯という処置をする。下顎は抜歯前に型を取り、即時入れ歯を製作する。そして、保存が無理な臼歯部を抜歯し、即時入れ歯を装着する。
2.抜歯した傷が治ったら、上顎は総入れ歯、下顎は両側臼歯部の部分入れ歯を新製する。
多分、どこの歯科医院でもこのような治療計画が一般的かと思いますが、この患者さんはまだ48歳の女性です。インプラントで対応するのはどうかとも説明させていただきました。しかしながら、この患者さんはインプラントには抵抗感があるとのことで、義歯製作に同意していただきました。
しかしながら、上顎が総入れ歯になると現在の歯茎もかなり吸収しているため、下顎に比べて上顎は唇頬側の骨から吸収するため歯列弓がかなり狭いものとなり、生理学的にアンバランスなものになります。無理して上顎の人工歯排列を正常咬合排列にするとその下にある歯茎部分は吸収されていくため、入れ歯の正中部に応力がかかり真ん中で割れてしまうのですね。従って、それを防止するためにも上顎は金属床入れ歯となります。しかも、貧弱な歯茎のため使用する金属も軽くて丈夫なチタンを使用する予定です。また、下顎も残存歯が前歯部のみとなるため、保険の入れ歯だとクラスプという金属のバネが見えてしまいます。そのことも踏まえてノンクラスプデンチャーという金属のバネを使用しない入れ歯を入れていく予定です。上下顎とも最終入れ歯は、保険診療が使用できるものではありません。こんなことを言うと、金の亡者だと言われる気もします。僕自身も言っていて怖いです。でも、この患者さんに対して、僕が思う現在の歯科医学ではそれが理論上では最適なのです。
審美と機能、これを追及して行くためにも使える金属、使う場所には慎重に選択することが必要なのだと思います。否定するつもりはありませんが、現在認められている保険診療では、入れ歯に関してはそのあたりがちょっとあべこべになっているようで、僕自身は何か疑問を感じます。
いずれにしても、施術する僕としては、金属床入れ歯とノンクラスプデンチャーを同一口腔内で行うことはあまりありませんね。審美と機能をある意味最高レベルで回復させなければなりませんしね。でも、この患者さんが笑顔になってやって本当に良かったと思われて治療が終われるように、一生懸命に頑張っていきたいと思います。
(写真はチタンを使用した金属床義歯です。口蓋部分のみに金属を使用するため、使用していて他人から見えることはありませんね。この写真は上記の患者さんとは一切関係ありません。)
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